前々回(048)で手ぬぐいの素材は木綿と書きましたが, 例外も存在します。
実用品ではありませんが, 日本舞踊などで使われる絹の手ぬぐいが存在するようです。
実用品としては麻の手ぬぐいがあります。
木綿と比べて独特のしゃり感があり, 涼感があります。
いわゆる麻は, ヘンプ(大麻), からむし(苧麻), リネン(亜麻)に大別されます。
このうち手ぬぐいに使われるのはヘンプと芋麻です。リネンはハンカチやシーツ, シャツ,
それにタオルなどに使われていますが, リネンの手ぬぐいは見かけません。
そもそもリネンの小幅織物を見かけません。
ところで, 日本では大麻ではなく苧麻が主な麻布の素材だったようです。
今でも苧麻の上布は法衣などで使われていますし,
襦袢や浴衣などでも一般的です。
もっとも苧麻の国内栽培もほとんど消滅してしまい, 輸入だよりで,
××上布などの産地を記した特産品も消えつつあります。
一方, 大麻の栽培は国内では厳しく規制されていますが,
神事に使われることもあって少量ですが生産されています。
したがって大麻を素材とした麻布は古布として残っているものを含めても希少と思われます。
衣類などでは大麻(ヘンプ)のものを見かけますが,
麻の反物として売られているのはいずれも苧麻と思われます。
手元には大麻の手ぬぐいもあります。これは国産の大麻です。
生成りの小幅反物でネット通販で入手しました。
関心のある方は「古代麻」で検索すればヒットするかと思います。
麻100%にこだわらなければ麻と綿の混紡の手ぬぐいは比較的容易に入手可能です。
緯糸が綿で経糸が麻(たぶん苧麻?)の手ぬぐいで十分麻のしゃり感を味わうことができ,
涼感とあわせて夏に向いています。
洗ったあとも木綿の手ぬぐいよりもさらに速く乾きます。
他に麻の絣の古い反物を切って作った手ぬぐいも使っています。
夏場は木綿の手ぬぐいに加えて麻の手ぬぐいも常時持ち歩くようにしています。
麻の手ぬぐいは, 入手の機会があれば是非使って見ることをお薦めします。