私見偏見独白

No.001-23 インボイス

統一協会問題や閣僚の辞任(事実上の更迭)と並んで,
ここのところニュースを騒がせているのが消費税の問題です。
増税をするかどうかという点以上に現在問題となっているのはインボイスの導入です
インボイスとは、すべての取引に消費税の額と税率を明記した請求書の発行を義務づける制度で,
この請求書により自身の売り上げから消費税分を控除することで税のすべてが
最終的な消費者の負担となる仕組みです。
これによって消費税の問題点とされている益税の発生を防ぐことができます。
このインボイスの導入について、多くの零細自営業者などが反対を表明しています。
ニュースではしばしば声優たちの反対の声を大きく取り上げています。
個人事業主としての声優という職業がそれだけ社会に認知されてきたからでしょう。

なぜ反対しているのでしょう。
今の消費税が導入され時の状況を思い出しました。
商取引やサービスなどに課税する付加価値税には大きく分けて,
取引の最初の段階にだけ課税する,
取引の最終段階にだけ課税する,
取引のすべての段階に課税する
という方式があります。日本の消費税はこの最後の方式です。
どの方式をとっても確実に税を徴収するにはインボイスが必須となります。
その処理が膨大になるため, 多くの国は最終段階の取引に課税する方式をとっていたと思います。
それでも公正な課税のためにインボイスの処理は必須で,
日本に先立って1973年に付加価値税を導入した英国では,
導入に際して税務職員を10倍くらいに増員したと聞いた覚えがあります。
取引のすべてに課税する方式を選んだ日本では,
インボイスの処理は英国以上に膨大になります。
導入に際しての反対の大きな理由のひとつが事務処理の負担でした。
中小零細事業者には重いものとなります。
そのため導入を図る政府は様々な仕組みを付け加えました。
インボイスの発行を義務とせず
各事業主が自分で帳簿に記録しておけば良いという帳簿方式,
さらには売り上げが一定以下の事業主は消費税を納めなくても良いという
免税事業者の制度などです。
これらの制度の追加によって免税業者は消費者から消費税として受け取った
税金を納める必要がないという, いわゆる益税が発生する問題が指摘されました。
そして消費税の導入が争点となった選挙で、与党自民党は議席を減らしたのですが,
過半数を維持し, 1989年に消費税が導入されました。

野党は消費税の廃止を訴えて次の総選挙に臨みましたが,
前回と異なり, 零細企業や個人事業主の大きな支持はえられませんでした。
かんぐれば, 実際に発生した益税をまのあたりにして,
消費税反対をひっこめたのでしょう。

自民党は勝利し, 消費税は定着してしました。
法人税と富裕層の減税のための大きく安定した財源を手に入れたのです。
以後, 福祉のためといいながら消費税の増収分は
事実上, 法人税と富裕層への減税に使われてきました。
3%で始まった消費税は今10%です。15%となる日も近いでしょう。

導入から30余年, 国民がすっかり消費税になれてしまい,
今や反対するのは共産党とれいわ新撰組くらいです。
そしてインボイスの導入が打ち出されたのです。
これまで益税となってしまった分を確実に徴収しようというわけです。
ある意味, これは正しい政策です。消費税とインボイスは公正な税の徴収に必要な
不可分の制度です。インボイスなしで消費税が始まったのは,
自民党お得意の, とにかくどれほど譲歩しても成立させてしまえば
あとはどうにでも出来るという, 小さく産んで大きく育てる方式です。
アベノミクスによる国民の困窮化で導入を言い出すのに
30年もかかったのは誤算だったかもしれませんが…。