私見偏見独白

No.001-06 21世紀暗黒時代

合州国では. 共和党と民主党という2大政党が議会の議席と大統領の地位をめぐって 選挙を戦います。
議会勢力も重要ですが, 大きな権限をもつ大統領がどちらの政党から選ばれるかによってに属するかで
国の方針が大きく変わります。

しかし合州国には, 議会で多数を占め, 大統領の地位を勝ち得ても変えることができない大きな力が存在します。
憲法判断を行う9人の最高裁判事です。
時の政権に忖度するどこぞの国の最高裁判事とはえらいちがいです。
任命するのは大統領ですが, 新しい判事を任命できるのは, 現職の判事が死亡するか,
あるいは自ら判断して辞任した場合のみです。任期は終身で, 大統領でも罷免はできません。

最も, 強力すぎる力は良いことばかりではありません。
大統領にとって最高裁判事を任命する機会を得ることは, 自信の政治的理念を実現するための最も強力な手段です。
自分の理念にそう判事を任命できれば, 自分が大統領の地位を去った後も,
それどころか国民の支持を全く失ったあともその理念を実現させることができます。

共和党の大統領は保守派の判事を, 民主党の大統領はリベラルな判事を任命します。
しかし任命の機会を得ることが出来るかどうかは, まぁ自由にはできません。
ここ半世紀を見ると運は共和党に大きく傾いていたようです。

半世紀前のタカ派の大統領レーガンは3人の判事を任命する機会に恵まれました。
以後最高裁判事はおおむね保守派が5対4くらいで多数を占める状況がつづいていました。
このレーガンの残した保守派の最高裁判事はレーガンの死後もその座を占めつづけ,
「レーガンがアメリカにかけた呪い」などと呼ばれていた気がします。

そして半世紀がすぎた21世紀, あのトランプ大統領も強運なことに3名の判事を任命する機会を得たのです。
3人目の任命は, 選挙に敗れ退任を目前にした時期に行われました。
最高裁判事の地位にを長く占めることになる若い判事で, とうぜんですが強硬な保守派の判事です。
いちおう議会での承認も必要なのですが, これを拒否できる十分な議席数の差を民主党はつけらませんでした。
退任が目前となった大統領は重要な政治的判断を新大統領にゆだねるのが慣例でしたが,
我らの元総理大臣同様に, 慣例などは無視をして任命を強行しました。
その結果, 最高裁判事の数は保守派が6対3となり大きくバランスを崩しました。
こうなると保守派に一人くらい冷静な人物がいても強硬派の判断はくつがえりません。
トランプが「アメリカにかけた新たなるのろい」といえましょう。

その成果(?)は早速だされました。
ニューヨーク州が定めていた銃の所持に一定の規制をつける法律が違憲とされ,
その効力を失いました。
そしてもっと大きな問題ですが,
ほぼ半世紀前に憲法判断がなされた女性の中絶の権利を認める判決がくつがえされました。
この結果, 各州が中絶を違法とする立法を憲法違反として阻止できなくなりました。
報道では過半数の州で事実上「いかなる場合でも」中絶は違法となり, かなり厳しい罰の対象となります。
そう, ほぼほぼいかなる場合でもです。10歳の少女がレイプによって妊娠しても中絶は許されません。
いちおう, 中絶が合法な州に行って, そこで中絶を行うという手段があります。
今回の報道を受け, 著名な企業の多くが州を移動する費用を負担するなどの従業員を守る制度を公表しています。
しかし, いくつかの州ではその抜け道も許されないような法律が用意されているようです。
加えて, 法律以前の話で, 中絶を行う医師の殺害や病院の爆破が増える懸念もあります。
合州国の半分はキリスト教原理主義で出来ているのです。

先進国のほとんどのリーダーが懸念を表明しています。
日本は?
リベラルな前法王から保守派の現法王に代わったバチカンは歓迎を表明しました。
キリスト教原理主義は中世暗黒時代の遺物と思っていましたが, そうでもなさそうです。
次の選挙で共和党, そしてまさかのトランプ復権などがあれば魔女狩りすら復活したりして……。
21世紀暗黒時代の始まりかもしれません。