私見偏見独白

No.000-94 永世中立

ロシアのウクライナ侵攻以降, 怒濤のようなマスコミのロシア非難, プーチン非難に驚いています。
いえ, 非難するのは当然です。驚いているのは, その規模です。

近年に限っても多くの「侵攻」と呼べる戦争があり, 民間人の被害など多くの悲劇が生じましたが,
今回ほど侵攻した側への広範な非難と, 国レベルはもちろんのこと, 広範な民間企業レベルの制裁の実施は記憶にありません。
侵攻したのが合州国かロシアかで世界の国々の対応がダブルスタンダードになるのはお約束ですが,
それを考慮しても今回は極端です。

BBCのなどの西側メディアのレポーターの無意識な差別的レポートが指摘され, 謝罪声明が出されていますが,
侵攻の舞台となった地域の住民が,「青い目で金髪のヨーロッパ人」であり,
謝罪をしたレポーターの言うところの「文明的ではない(非ヨーロッパの)開発途上国」の出来事ではないということが大きいのかも知れません。

そんな中で最も驚いたのが, スイスが国レベルの制裁を実施したニュースです。
ナチスと戦った第二次世界大戦でも中立を保ち, 永世中立国としても立場を固めたスイスです。
そのスイスが「永世中立」の立場を放棄したのです。
今回は例外的措置だと声明されていますが,
敵対国に通る言い訳になるとは思えません。
そんなことは起こらないと思いますし, 起こって欲しくないと思いますが,
もしもNATO諸国とロシアが戦争状態になれば, スイスも攻撃対象になると思われます。
なにしろ西側諸国の重要な金融センターです。敵国の経済力をたたくのは基本です。

「中立」は敵味方双方が認めてこそ存在できる概念です。
そこに例外を認めては成り立ちません。
「永世中立国」がひとつ, 自らの意思で消滅しました。
今回のウクライナの戦争がどのような決着で終わるのか, 先行きは不明ですが, 戦後に残る最も大きな影響は, スイスという永世中立国の消滅だと思います。
今後もスイスは「永世中立」の看板を下ろさないと思いますが, 世界の国々の, 現在そして今後の政治的指導者は,
独裁国家はもちろん民主国家であっても, こころの奥底ではスイスの中立を信じることはないでしょう。