私見偏見独白

No.000-7 修正13条

マスコミやネット上で BLM(Black Lives Matter) という言葉を頻繁に見かけます。
かつて Black is beautiful というスローガンがありました。 黒人を表す "black" という言葉が持つネガティブな意味を否定するにとどまらず, その価値観を逆転させることによって黒人たちの意識を覚醒させようとしたスローガンでした。 これは, 白人の意識への訴えでもある BLM よりもある意味で過激です。 今ではファッションの世界で黒人の美を意識させる言葉として使われているくらいですが, 60年代から70年代にかけては黒人文化, Black Power を象徴する言葉でした。

このスローガンと, そしてもうひとつのスローガン "All Power to The People.(すべての権力を人民に)" を最も先鋭に具現化したのが 黒豹党(Black panther) でした。キング牧師に代表される非暴力の運動に対して, 黒豹党は自衛のためなら暴力も辞さないとして武装した団体です。
過激派のように聞こえますが, 憲法で自衛のための武器の所持が認められ, 実際にそれを行使しているアメリカ社会にあっては過激とは言えない普通の考えだと思えます。 また黒人貧困層への食料配布やボランティア活動も行っていました。 しかし, 当然のごとく, 白人の権利は黒人には認められません。
キング牧師の暗殺は大きな事件としてよく知られ, 殉教者のように扱われていますが, 黒豹党の指導者たちも, ほとんどが暗殺されたりFBIの捜査で殺されたりしました。
今であれば, BLMのきっかけとなった事件のように大きな問題となったでしょうが, 当時はFBIや警察が黒人を射殺しても何の問題にもなりませんでした。 多くの指導者を失った黒豹党は内部分裂もあり, 10年ほどで消滅したのです。

このような奴隷解放後の黒人をめぐる社会環境は70年までの公民権運動の沈静化後はあまり伝えられることがなくなってしまいましたが, 最近, youtube にアップロードされている Netfix のドキュメンタリー

「13th ~ 憲法修正第13条 ~」

を見ました。必見の動画だと思います。設定で日本語字幕も表示できます。 合州国の黒人の歴史を知れば, BLM に対して白人の側から言われる ALM(All lives matter) という言葉に多くの黒人が怒りを感じる理由が判るかもしれません。
また未読ですが,

「アメリカン・プリズン」 シェーン・バウアー著 (2020 東京創元社)

という本も良さそうに思います。

最近, 映画「風とともに去りぬ」の黒人描写が問題とされたり, 商品名やバンド名の変更, ディズニーランドのスプラッシュ・マウンティンの扱いを変更するなどのニュースが伝えられ, 日本のネットでは「行き過ぎたポリコレだ」, 「表現の自由を侵す」などの意見も多く見られますが。 これらの動画や本を見れば, 過剰反応とも言えないかなと思います。