私見偏見独白

No.000-62 落穂拾ひ

教育関係でとりあげようと思っていたニュースがいくつかあったのですが,
コロナ感染の拡大などに注目している間に書き損なった話題の落穂拾ひをしておくことにします。

教員の労働状況がブラック過ぎることが話題になったさなか, 与党はその改善をはかるための働き方改革を名目にこの夏に教員に変形労働制を導入しました。
この改正特給法は来年4月から施行されます。
変形労働制とは労働時間の制限を週単位ではなく一年間を通して計算してもよいというものです。
ようするに忙しいときには一日, あるいは週単位で労働時間が長くなっても, 忙しくないときにまとめて休むことで 年間を通しての労働時間が制限時間内におさまっていれば合法とする仕組みです。
極端なことをうえば,
"来週は全休にするから今週は24時間5日間かたときも寝ないでずっと勤務してね"
というのも合法になります。
"教員は夏休みにまとめて休める(ほんとか!?)のだから, それ以外の時は毎日超過勤務してもいいよね"
ということです。
どう考えても, 教員の労働環境はより悪化することはあっても改善されることはなさそうな仕組みです。

当然多くの教員は反対しましたが, その声は無視され成立しました。
これによって各自治体は教員に対して変形労働制を適用できるようになったのですが,
適用には自治体ごとに条例で決める必要があります。
法案成立後も変形労働制を導入する自治体はなかったのですが, 12月11日, 北海道で導入のための条例が可決され, 2021年度から実施されることになりました。
様子見であった自治体も北海道に続くことが懸念されます。

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政府は今後5年(!)をかけて小学校の学級定員を35人とすることを決めました。
民主党政権時代に小学校低学年のみ35人学級にすることが決められ実施されていたと思いますが, その後のクラス人数の削減は自民党の反対で実現していません。
野党は30人学級の実現を提言し, そのための予算を文科省も要求していましたが,
実現していませんでした。
今回, コロナ禍で学級定員を減らさなければ教室内の密は避けられないという事実に直面し,
世論に押されことで実施に動いたのかと思われます。

自民党の広報誌としか思えない産経新聞などは決断を絶賛し,
歓迎する保護者や教育関係者の期待の声を報道していました。
そして必要となる教員の確保に当たって質が落ちないようにしてほしいとの声を伝えています。
産経新聞の読者は記事を読まないのでしょうか。

「あなた、お馬鹿ぁ?!」
(エムロイの使徒 ローリー・マーキュリー)

政府広報によれば, 必要となる教員は現在加配されている教員の数を基礎定数に組み込むことでまかなうとしています。
今まで加配の教員だった人が正規の教員になるだけです。
規定上の教員数(基礎定数)は増えますが現場の教員は増えません。

そもそも少子化による生徒数の急激な減少で,
一部を除いて多くの小学校では5年もかければ何もしなくても35人以下になりそうです。
現在は, それを教員を減らすことで40人学級にしている状態です。
現状を維持すれば自然に実現できる政策です。
5年もかけるならば世界の常識である20から25人学級を目指すのがまともな政策だと思います。
先進国はもとより, 開発途上国を含めても, 最も教育費を出さない政府を選んでいる限り実現しそうもありませんが・・・



追記:
教員に変形労働制を適用するための条例は, 北海道に続き徳島県でも可決されました。
文科省の調査ではさらに10の県が今年度内に条例を整備する予定で, 13の都道府県と2つの政令指定都市が時期は未定ながら整備を予定しているとのことです。
我らが群馬県は*まだ*予定はしていないようです。