私見偏見独白

No.000-61 巨大望遠鏡

プエルトリコのアレシボに作られた巨大な(直径305m)の電波望遠鏡が先日の2020年12月1日午前7時54分頃 崩壊しました。
科学観測だけではなく, いくつかの映画の舞台としても登場した施設でした。
SETI(地球外文明探査)のようなロマンのある計画の中心でもありました。

8月にケーブルの一部が切れて落下し, 主鏡に30mほどの亀裂が生じて運用を止めていたのですが. 修理費用などから11月に解体廃止が決まった矢先の出来事です。
完成して運用が始まったのが1963年ですから老朽化もあったかと思います。
しかし, 2007以降予算の削減が続き, メンテナンスが十分に出来ていなかったことも原因のひとつと思われます。
合州国の国家予算規模から見ればたいした額ではないと思うのですが・・・
新自由主義の政策によって, すぐに利益を出さない科学プロジェクトの多くが予算削減あるいは中止となっているのは とても残念なことと思います。
1968年に合州国大統領になったニクソンは, 宇宙よりも福祉と述べて科学技術予算を縮小しました。
反対者たちの, 軍事費を縮小すれば宇宙も福祉も得られるという主張は顧みられませんでした。
そして現在, 科学や知性を敵視するトランプ大統領の時代に崩壊したのは象徴的な出来事だと思います。
アレシボ電波望遠鏡の歴史は予算削減との苦闘の歴史でもあったと言えるでしょう。
ハッブル宇宙望遠鏡のような, より先進的な望遠鏡が主要な役割を担うようになってきていますが,
巨大望遠鏡ならではの役割は今でも存在するので残念なことです。
2016年に完成し, アレシボ望遠鏡にかわり世界最大の望遠鏡となった中国のFAST(直径500m)が 今後はその役割を担うことになるかと思います。
FASTは今年2020年1月に正式運用を開始しています。
アレシボの望遠鏡のような歴史に残る発見と成果が出されることを期待しています。