私見偏見独白

No.000-52 続 Uber Eats

前々回(000-50)で Uber Eats の話題を取り上げました。
ネット上では Uber Eats社を批判する声が多く見られます。 いつもネットウヨが大活躍のヤフコメなどでも, 日本ではそんなやり方は許されないというような書き込みが多く見られます。
派遣の規制緩和などに批判的なものから見れば当然の主張なのですが, どうもそういった観点ではなく, 単に外国企業なので叩いている感じを受けます。
amazon を叩くのと同じですね。
「日本の制度は世界一ぃぃぃぃ!!!!」
とでもいいたいのでしょうか, 「日本はすごい!」という自画自賛ですね。
Uber社のビジネスモデルに対して労働者の権利の保護の観点から否定することとは, 結論以外は欠片も共通点がありません。

実際, 「日本では許されない」どころか「日本でしか許されない」に世界の流れは変わっています。
スイスでは Uber社のライド・シェアのビジネスに対して政府が差し止めの判断を示しました。
Uber社を仲介業ではなく交通サービスの提供者と見なし, 運転者の雇用と社会保障の提供の義務があるという判断です。
この判断によってUber社は昨年9月にスイス国内のサービスを取りやめました。
日本でもライド・シェアのサービスは始められませんでしたが, それは雇用の問題ではなく, 000-50でも書いたように,
個人の自動車を旅客運送に使用すること(いわゆる白タク)の規制があったからです。
EU 各国もスイスにならう方向のようです。

アメリカ合州国ではどうなっているでしょうか。
11月3日は大統領選挙の投票日ですが, カリフォルニア州ではプロポジション22 の賛否を問う投票が同時に行われます。
これは住民投票で, Uber社のようなビジネスモデルを認めるか否かの投票になります。
以前より法廷で争われていたのですが, 10月22日にUber社はライド・シェアの運転手を個人の事業主とみなすことは違法であるとの判決が出されました。
判決は30日以内に個人事業主から従業員に切り替えるように命じていますが, Uber社はその判決のもととなった法律の修正を求めてプロポジション22と呼ばれる 住民立法案の成立を目指したのです。日本の住民投票みたいなものですが, 日本のそれと違って成立した場合には州政府は従う義務があります。
これが否決されれば Uber社のビジネスモデルは成り立たなくなります。

海外では 飲食店の出前ではなくライド・シェアが中心ですが, ビジネスモデルとしては同じです。
大統領選挙と同じくらい注目すべき投票です。
州の独立性が高いのでプロポジション22が否決されても他の州でのビジネスは継続できますが, 他の州でも規制の動きは強まることと思われます。

世界では規制に向かっていると言えるのですが, 新自由主義者が我が世の春を謳歌する我らが祖国では, 個人事業主とみなすビジネスモデルは増える一方です。
ライド・シェアは認められませんでしたが, 旅客運送ではない宅配などでは国内企業がすでに何社か採用していますし, 他の業種でも広まりつつあるのではないかと懸念するところです。
アルバイト(直接雇用)→派遣→個人事業主の請負→個人事業主の仲介
というように労働者の立場が変わっています。
すべてが自己責任という新自由主義の世界です。

「素晴らしき新世界」は日本でこそ実現するのかもしれません・・・