私見偏見独白

No.000-47 倫理

「2001年宇宙の旅」などで知られるSF作家 アーサー・C・クラークの短編集に収録されている 「死と上院議員」という話があります。

宇宙開発の熱気が冷めて宇宙関連の研究費が大幅に削減されたアメリカが舞台です。
当時のアメリカ合州国の政策を念頭においたのでしょう。
宇宙よりも福祉といって宇宙開発関連の予算を削減したのです。
実際は軍事予算を増やすためだったと思います。

そんな時代を背景にした話で, 宇宙開発に反対して関連予算の削減の中心となった上院議員が 重い心臓病であることが判ります。 手術も不可能で余命わずかです。
その死を待つのみの上院議員のもとに ソ連の宇宙病院から手紙が届きます。
宇宙の無重力の環境であれば上院議員の心臓手術が可能だと。
そして米ソの友好のために議員をソ連に招待して手術を行う用意があると。
アメリカが宇宙開発を縮小した後もソ連では研究開発を続けていて, 宇宙での医学も画期的に進歩させていたのです。

しかし上院議員はその招待を辞退します。
自分の反対で宇宙医学の可能性を閉ざしたのに, 同じ病気で死んでいく他の人をさしおいて自分だけが助かるのは倫理的に許されないことだと言って・・・。

さて, 合州国のトランプ大統領がコロナにかかって入院したというニュースが世界を驚かせています。
回復したという情報や余談を許さないという情報, はたまた不利が伝えられる大統領選挙の大逆転を狙ったはったりであるという陰謀論まで, さまざまな情報が飛び交っているようです。
陰謀論はさておき, すくなくとも最高の治療が施されていることは事実でしょう。

ところで, トランプ大統領は日頃よりコロナを軽視する発言を繰り返し, マスクを着けず, 取材のための記者にさえ質問するならマスクを取るようにと発言しています。
支持者の集会はもちろん, ホワイトハウスの公的行事においてさえマスクなしで行い, 側近を中心とした今回のクラスターを発生させたとみられています。
そんな彼が感染するやいなや速攻で入院し多数のスタッフによる最高の治療を受けているのです。
コロナなどたいしたことがないといい, 感染拡大を防ぐための対策をきちんととることもなかったトランプ大統領は,
大統領のような万全最高の治療を受けることなくコロナで死んでいった200000を超える同胞に対してどんな思いを感じているのでしょうか。



やっぱりこうなるか
(帝国軍第二〇三航空魔導大隊副官 ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉)