先の安倍内閣が慣例を無視して脱法的な行為を行ってきたことはすでに指摘しました。
その実行者であったのが安倍内閣の菅官房長官でした。
安倍内閣から菅内閣に変わったときに,
安倍内閣以上に脱法的行為があからさまに行われることを危惧しましたが,
さっそくその危惧が現実になりました。
すでに報道されていることですが,
自分の意に沿わない官僚はやめさせる旨の発言をしていますが,
それを人事権の及ぶ官僚だけにはとどめるつもりはないようです。
学術会議の推薦した105名の会員候補者のうち6名の任命を拒絶したとの報道が昨日ありました。
拒否の理由は明かされませんでしたが,
拒否されたのは,
いずれも以前の国会で参考人として政府の法案などに懸念や反対意見をのべるなど,
政府に対して批判的な学者です。
学術会議の会員は,
「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」
と定められています。
第十七条の規定は推薦者は学術会議が選考することを定めた規定です
菅首相は, この「基づいて」という言葉から任命権は総理大臣にあるので,
拒否することもできると主張しています。
しかし, これを認めたのでは日本は国民主権の民主国家ではなくなってしまいます。
この文章と全く同じ形式の法律があります。
憲法第一章の第六条に
「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。」
「天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。」
とあります。
条文にある「基づいて」という言葉を拒否もできる任命権と解釈できるのであれば,
天皇は自分の意に沿わない総理大臣や最高裁判事を拒否できることになります。
それは国民主権を否定する事実上の天皇主権となってしまいます。
天皇制と国民主権を両立させるための"工夫"が「基づいて」という言葉に込められています。
だからこそ,
この学術会議の推薦制度ができてからすべての内閣,
安倍内閣ですら推薦者をすべて任命してきたのです。
しかし, 慣例や法の解釈を無視した脱法行為の実行者であった菅首相は拒否に何のためらいも持ちません。
民主主義の崩壊が始まりました。
追記
多くの報道機関がこのニュースを報じていますが,
学問の自由が侵されるという観点からの批判が多数のようです。
学問の自由の侵害も見逃すことのできない重要な観点ですが,
より問題にすべきことは, 上で説明しているように,
民主主義の手続きを定めた法律を自分の利益に沿うように勝手に解釈するという
手法にあります。
こんな勝手解釈, 推薦者を拒否できるという解釈は,
この制度が国会で決められたときに,
今回のような事態を危惧した野党の度重なる質問に対する
自民党政権の国会答弁で明確に否定されています。
しかし, そんなことは歯牙にもかけないのが, 安部政権そして菅政権のやり方です。
学問の自由の侵害も重大ですが,
民主主義, 国民主権の否定と破壊はさらに重要な問題です。