私見偏見独白

No.000-30 民度

1965年, パキスタンのブット外相が海外で活動する日本のビジネスマンの行動をエコノミック・アニマルと 表現して批判しました。
高度経済成長を始めた当時の日本人の必死さが表現されていて, 言われていい気持ちはしないものの, 日本人自身それほど悪い気持はしなかったのではないかと思っています。

このような批判を招いたのは, 市場占有率の獲得を第一とする日本の企業の価値観が原因のひとつと思っていたのですが, 最近のコロナ禍の中での買い占めからくる入手難につけこんだ高額転売の騒動をニュースで聞くと, 明治以降の日本人自身が持っている国民性というか「民度」なのではないかという気がしてきました。

転売だけではありません。 その趣旨を無にするような法律や制度の穴をついた行動で自身の利益を計る行動がいたるところで見られます。
ふるさと納税という制度があります。「納税」と名前がついていますが, 法律上は自治体への寄付で, その寄付額が本来納税すべき金額から控除されるという仕組みで, あたかも納税する自治体を納税者が選べるようになっています。
この制度がつくられたときから, 高額納税者に有利な仕組みと批判されてきましたが, それは「納税」を受けた自治体が返礼品を送ることができたからです。 それをあからさまに運用する自治体が現れました。
本来, 寄付を受けた自治体の特産品などを返礼品にすることで地域の振興もはかろうという趣旨だったのですが, 一部の自治体が「納税」を増やそうと, amazon gift などの, 現金と同様に使える返礼品を用意したのです。
すぐ判ることですが, ふるさと納税の額が増え, 返礼品に使われる額が増えれば, 国全体の税収は減ります。 東京都などは数十億円の減収となっているようです。「ふるさと納税」するには納税額の下限が定められていますし, そもそも非課税層には無縁のもので, 高額納税者ほどそのメリットを享受できる仕組みです。
あまりにもあからさまな行動から, 政府がある自治体をこの制度から適用除外にしました。 その自治体は裁判に訴えて, しばらく前に勝訴が確定しました。
制度の趣旨はともかく, 法律には違反していないのです。
どんな法律や制度も, 完全に悪用の可能性をふさぐことはできず, 最終的には各個人の良心やモラルにいきつきます。 それが民度なのだと思います。

先日, コロナ対策に必要として, 野党がそろって憲法53条の規定に基づき臨時国会の開催を政府に要求しました。
与党は国会を開く必要性などを理由に応じていませんが, 憲法の規定上必ず開く必要があります。 しかし, ここで政権のモラルが問われるのです。憲法の規定では, 臨時国会を開かなければならないとされていますが, 何日以内にとか開く時期については規定されていません。
常識的には可能な限りすぐに開くものなのでしょうが, これを根拠にいつまでも開かないのです。 安倍内閣では過去にも同様なことがあり, 結局要求された臨時国会は開かれずに終わっています。 今回も開かれずに終わる可能性が大きいと思います。
これもまた内閣および与党議員の民度, そしてその与党を選挙で何度でも何があっても勝たせてしまう日本人の民度の問題なのでしょう。